トラファルガー広場の再生
背景とねらい
ロンドン繁華街に位置するトラファルガー広場は、非常に高い歴史価値を持ち、この都市にとって、また国家にとって最も重要な公共空間の一つです。それにもかかわらず長い間、不快で、不安を与えるような、自動車に取り囲まれた広場として悪評の高いものとなっていました。この広場と、南約700m先にあるパーラメント広場とを繋ぐ地区の公共空間としての質の向上を目指し、1996年、ウェストミンスター区によってマスタープラン検討が発注されました。
Space Syntaxの貢献
私達の初期の歩行者行動調査は、次の2点を明らかにしました。まず、ロンドンの地元市民がトラファルガー広場の中を通るのを避けていること。そして、観光客がトラファルガー広場から南のパーラメント広場方面へ安全・快適に移動できていない、というものでした。これらの発見は、我々ノーマン・フォスター・チームのコンペ案に優位性を与え、契約を勝ち取るに至りました。 その後、さらに詳細な調査を行うとともに、将来の歩行者量分布の予測モデルを開発しました。このモデルを用いて、簡便に異なるデザイン案を評価し、代替案を導くことができました。私達の案とは、北面の壁中央への幅広の大階段の新設、一部の道路の歩行者化、広場から南側地区への動線の再構築などでした。しかしこれらの案は、重要な歴史・文化遺産の改変を伴うことから、非常に確信を持った、専門的議論を要しました。この中で、前述のような科学的根拠が非常に有用であったことは、言うまでもありません。
成果
根拠ある議論は功を奏し、最終的に全ての利害関係者の同意を得ました。2003年に、一連の整備事業の最初の部分として、新生トラファルガー広場がオープンし、利用者が13倍にも増えるという成功を収めました。 現在この広場は、観光客だけではなく、ロンドン市民にも使われ、一日中賑わっています。これにより英国は、公共空間の豊かさ、生活の質の豊かさを世界に誇ることができるようになったと評されています。
発注者
ウェストミンスターシティ(区役所)
共同者
フォスター・アンド・パートナーズ(ノーマン・フォスター)、 ハルクロウ・フォックス、シヴィック・デザイン・パートナーシップ、デイビス・ラングドン・アンド・エヴェレスト
年次
1998