神戸市:歩行者動線・空間構成改善等の分析検討
背景とねらい
Space Syntaxの貢献
多様な要素が絡む駅周辺のデザイン検討。多くの専門家による議論がなされるなか、ややもすると感覚的にもなりかねない議論に、以下のような客観的な論拠を提供しました。
・エリアの課題とポテンシャルの理解
狭い歩道に非常に多くの歩行者が集中し、交錯や迷いが生じていること、また逆に、百貨店まわりの一角には人通りが少なくアンバランスが生じていることなどについて、調査データを用いて示しました。また、歩行空間のつながり方や、沿道の店舗開口の連続性など、歩行回遊性に直接的に関係するアーバンデザイン要素について、GISを用いて可視化し、考察しました。
・ 界隈、結節点など、場所の特性の考察
エリア内の個性豊かな「界隈」の境目となる場所であり、また経路選択においても重要な場所となる「結節点」について、人々の空間認知の観点からそれぞれの特性を示しました。この知見は、街路空間デザインにおける舗装やファニチャーの連続性や切り替わる場所についての議論にも活用されました。
・ 主要な場所のデザイン検討へのインプット
非常に多くの人々が移動する駅直近。その公共空間デザインの検討において、動線の混乱、混雑などが生じないよう、水盤などのランドスケープ要素の配置について、分析的な根拠に基づき、助言を行いました。
成果
神戸市では、市民や事業者に対して三宮の将来像を共有し、協働してこれを実現するため、『神戸三宮「えき≈まち空間」・税関線景観デザインコード』を2022年春に公開しました。全体および付録にて、Space Syntaxの調査分析結果が紹介されています。
もちろん、プロジェクト自体は、まだまだ続きます。今後も、詳細な空間デザインと動線の分析の段階において、要所の検討を担えることを願っています。
「えき≈まち空間」・税関線景観デザインコードについて
https://www.city.kobe.lg.jp/a55197/designcode2.html [市ウェブサイト]
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/53818/zenntai2.pdf [全体]
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/53818/furoku2.pdf [付録]
- Client
- 神戸市
- Year
- 2019-
A従前の駅前 (2018)
まちの中心駅にも関わらず、駅前が自動車中心の空間となっており、人のための場所が極めて乏しい状況であった。
B現況分析: 「人々の行動」と「空間特性」との関係を理解
まず、エリアがどのように機能しているのか、人々の行動の様子(歩行者量、歩行経路・歩行中の行動、滞留行動)を現地で観察するパブリックライフ調査を行った。これにより、現況の課題や、隠された行動ニーズを把握した。
一方で、それらの要因ともいえる「空間特性」について、Space Syntaxの中心性の指標や、沿道の店舗状況などのデータを可視化して、アーバンデザインの知見のもとに考察を行いました。
C現況分析: 結節点(ノード)の特性の考察
街路空間のデザイン検討において、照明柱などのファニチャーや舗装などを、「どこからどこまで」統一的に設え、一体的な場所として認識させるべきか、議論がなされた。この際に、それぞれの交差点の「結節点(ノード)」としての特性を理解することが不可欠であった。
そこで、沿道店舗等の特徴からの界隈(左上)、街路構造の認知的な特性(右上)、動線的な特性(左下)、および、現況の歩行者量(右下)を総合して考察することにより、それぞれの結節点の位置づけを示し、具体のデザインの根拠のひとつとなった。
D将来予測: 広場の再生デザインによる効果の可視化
駅周辺エリアでは、多くの場所が順次、再生整備されるが、そのうちのひとつである公園(東遊園地)の具体のデザイン案について、空間特性の観点から評価を行った。図に示すのは、このうち動線の接続の良さを示す「アクセス性」指標の比較である。
これにより、主要な動線(a、b)の指標値が向上していることや、 各ゾーンの位置付け(a~d)が明快になり、迷いが少なく、利用されやすい配置になることを示した。
※ 異なる色レンジで可視化している(実際の指標値は計画案のほうがかなり高い)。