池袋エリア: 公的空間デザインの戦略的要所の検討
背景とねらい
Space Syntaxの貢献
南池袋公園などが注目される池袋ですが、今後、大規模な再開発や公共空間整備が予定されています。これらが個々の事業性、合理性だけで検討されたのでは、都市空間としての脈絡・つながりの感じられないエリアになりかねません。そこで、スペースシンタックスは、以下のような検討を行いました。
・ データと空間特性の分析に基づく現況把握と、要所“ツボ”の抽出
エリア内の広範囲において、実際のアクティビティ(いわゆる人流だけでなく、滞留や移動途中の行動も含む)の観察調査を複数回、実施しました。また、空間ネットワーク特性、空間構成の特性についてもアーバンデザイン理論や知見に基づいて行いました。これらについて、GISを用いた可視化を行い、様々な観点から考察しました。また今後の改善、魅力向上を図るうえでの要所“ツボ”の抽出を行いました。
・ アーバンデザインの知見を踏まえたデザイン議論
各施設、事業の成功と同時に、エリア全体にも波及効果があり、ひいては長期的なエリア価値向上につながるよう、世界各国の都市プロジェクトで共有されているアーバンデザインの語彙、知見を踏まえた検討を行いました。これらの知見、技能を持つSHIP Architectsとともに、具体的な空間像および要点について3次元での可視化を行いました。
成果
検討結果を、個々の再開発プロジェクト検討や、エリアプラットフォーム(豊島区や地元の事業者、UR都市機構などを中心に組織化)での議論に活かしていただいています。
※この業務に関して、令和3年度、4年度、5年度 UR都市機構「優秀建設コンサルタント業務事業者感謝状」をいただきました。
- Client
- UR都市機構
- Team
- SHIP Architects (2019-2022)、プレイス・ソリューションズ・グループ(2019)、都市環境研究所(2020)、コトラボ(2021-2022)、ほか
- Year
- 2017-2023
A各段階における業務内容
はじめに、現況理解のための様々な調査、空間特性分析、次に、実際の開発計画等を踏まえながらの将来像の検討、要所(ツボ)の抽出、さらに、アーバンデザインの知見を踏まえた要点の検討など、その時々のエリアの動向に対応しながら検討を行った。
B都市軸の現状
自治体の計画において重要な「南北軸」とされている街路。複合文化施設の拠点と、人気のある公園を結ぶ重要な動線であるが、実際にはあまり認知されていない。今後の再開発や公共空間整備においては、見える=行けるの関係が明解な歩行動線、空間構成を実現する戦略が望まれる。
Cネットワーク空間特性の指標化と考察
真のウォーカブルエリア=歩行ネットワークが人の空間認知に対応し、「つながった」エリアとなるよう、位相幾何学的な中心性の分析手法を用いた分析を行った。
D様々な空間特性の可視化
例えば、「街区の大きさ(ブロックサイズ)は、歩行回遊性の高さと関係が深い重要な空間特性である」というようなアーバンデザインの知見を用いて、現況のエリア特性をわかりやすく伝えるための可視化、GISを用いた分析的空間デザイン検討を行った。
E既存の広場・公園の調査分析
自治体の計画でも重要な拠点と位置づけられている4公園のほか、空間再編による活用のポテンシャルが高いと考えられる広場・公園について、現状の機能状況の観察調査や、空間特性の指標化・可視化を行い、今後、進めるべき方向性について考察した。
Fアーバンデザイン的な要所、具体の空間像の提示
将来の開発に向けた戦略的な指針を示す際に、平面図上の抽象的な表現や定性的な基準では実効性に欠けることが懸念される。本検討では、具体的な空間像を3次元で示し、どこの、何を、どうするのが重要かを実空間と対応づけて伝えることを試みた。