Lab.4 Space Syntax

空間レイアウトと人間の行動との間にはどのような関連があるのだろうか。開かれた実験室・研究室を目指す展覧会シリーズ「lab.」の第4回となる本展では、近年、都市・建築空間デザインの新たな手法として注目されている〈Space Syntax〉を主軸として、その理論と実践を紹介するとともに、空間の「つながり」や「関係性」といった視点から金沢21世紀美術館の空間レイアウトについて調査や分析を進めた。
本展は4つのフェーズ(1. イントロダクション:空間のつながりを可視化する、2.〈Space Syntax〉の理論と実践、3. 空間レイアウトと人間の認知・行動との関係を観察する、4. 金沢21世紀美術館の空間特性を分析する)で構成され、3においては、機械学習などのテクノロジーを用いた映像解析手法を導入し、空間レイアウトと人間の認知・行動との関係を分析しつつ、新たな調査手法の開発を試みている。また、4ではリサーチサポーターの参加によって、空間を区切るアクリル扉の開閉パターンを変えながら、館内の動線と行動を調査した。
展示と並走する、こうした調査や分析といったアクティビティは、この美術館が持つ空間レイアウトの特性を解明し、その新たな可能性を探る端緒となった。このサイトは本展の4つのフェーズを展示とは違ったかたちでウェブ用に再構成したものである。また、本展をトレースするだけでなく、調査後の分析を深化させるとともに、ラップアップセッションなど関連プログラムの内容を加えたアーカイヴとなっている。

スペースシンタックス・ジャパンでは、これまで多くの都市空間や商業施設のデザイン評価・検討に取り組んできました。分析の理論・手法が概ね確立しつつある一方で、近年の社会情勢の変化や関連分野の技術革新などにより、新たな展開に向けた屈曲点に立っていることを感じていました。そんな折、lab 4 Space Syntax展の企画をいただきました。
金沢21世紀美術館は、美しく機能的な文化施設であるだけでなく、実験・挑戦の場としても絶好の場所であることに、ほどなく気づきました。また、この美術館に強い思い入れを持つサポーターの皆さんの存在は、大いに刺激や励みになりました。
この展示は、Space Syntaxの変曲点に置いた、一点のマーカーのようなものかもしれません。粗削りな、あるいは冗長な部分もありますが、思考・議論の結果としてそのまままとめました。
新たな方向、展開の模索はまだまだ続きます。このアーカイブサイトを通じて、みなさんにも、普遍的な「空間レイアウトの力」を再発見していただくとともに、美術館建築の新たな価値や魅力についての議論に加わっていただければ幸いです。

スペースシンタックス・ジャパン 高松誠治

期間:
2019年10月12日(土) 〜 2020年6月14日(日)
会場:
金沢21世紀美術館
主催:
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
料金:
無料
入場者数:
152,386名
  • スペースシンタックス・ジャパン: 高松誠治 / 平川隆之 / 小林稜介 / 山﨑諒介 / 酒井隆宏
  • 企画: 金沢21世紀美術館 中田耕市 (キュレーター)/ 森絵里花 (プログラム・コーディネーター)
  • 会場設計: 設計事務所岡昇平 岡昇平 / 広瀬裕子 / 保井智貴 /大久保友宏
  • グラフィックデザイン: 根本真路
  • ウェブサイトディレクション: 小須田英盛 / 外岡遥香 (プログラミング)

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イントロダクション

空間配置:
この場所が持つ力
― 「つながり」に着目した空間特性の可視化 1

この部屋(デザインギャラリー)で 「かくれんぼ」をするとき、どこに隠れる? 「おにごっこ」の鬼なら、どこで見張る?
床を見てみてください。敷き詰められた 50cm 四方のタイルには、いくつかの数字が書かれています。 例えば「Connectivity」。左の図では「144」となっています。これは、このタイルから直線を引ける(=曲がらずにたどり着ける)タイルが 144 枚あることを示しています。

空間配置:
この場所が持つ力
― 「つながり」に着目した空間特性の可視化 2

ここでみなさんがご覧になっている床(上記の360度ビューをご参照ください)は、4つの指標のうち、近接中心性(インテグレーション)指標をもとに、 ヒートマップとして描かれています。

同じ部屋の中でも居場所を変えると周囲との関係性が変化します。あたりまえのようですが、あまり意識しなかったのではないでしょうか?
人間は、このような場所の力を無意識に感じて、行動を決めています。このことを理解することで、 空間の計画やデザインを合理的に進めることができるのではないでしょうか? このフロアに記されているような客観的な数値を組み合わせて解釈することによって、いろいろなことが見えてきます。

これは、Space Syntax への「入口」です。空間のつながりの可視化、まだまだ続きます。

関連プログラム

空間レイアウト調査
〜リサーチサポーターとの協働〜

空間レイアウト調査 ラップアップセッション

2020.6.14
22020年1月に行った美術館での空間レイアウト調査の結果をふりかえり、意見交換を行いました。 調査結果の報告部分は動画を公開しています。

空間レイアウト調査 行動調査

2020.1.17-18
改修工事のため休館している美術館を使って空間レイアウトの特性を考え、その可能性を探る調査を行いました。参加者とリサーチャーを公募し説明会を実施しました。

リサーチサポーター 説明会・キックオフミーティング

2019.7.24 / 2019.10.10
行動の調査や動線の分析に携わるリサーチサポーターを募集しました。

キッズプログラム

あなたがまるい美術館を作るなら?
オリジナルレイアウトを考えよう

美術館のレイアウトを自由に考えるワークシートを配布しました。

おうちで「ハンズオン・まるびぃ」
Space Syntaxとともに
〜まるびぃ いろとカタチのさんぽみち〜

家でもできるクレヨンやマスキングテープを使った遊びを紹介しました。